製版について

印刷とは、辞書で調べると「印刷版を作り、その版面にインキをつけ、紙・フィルム・布その他に転写して多数の複製を作ること」とあります。
通常「版」(または刷版ともいう)は、その印刷をするためのデザインされた部品と言えます。
通常の印鑑を想像すると分かりやすいかもしれません。ハンコが刷版、朱肉がインキにあたり押された名前などの印が印刷物です。
その版上に文字や写真のイメージを書き込む事で、いろいろな情報や絵柄を印刷できる様になります。

印刷方式に応じて、さまざまな版があり、その形状から凸版方式・平版方式・凹版方式・孔版方式に分類されます。よく紙印刷に使用されるオフセット印刷は、版にインキを付けて大量に印刷する有版方式ですが、電子写真(いわゆるコピー機による印刷)やインキジェットプリンターは、版が無くデータからそのまま印刷されるので、無版方式と呼ばれます。
製版とは、印刷用のデザインデータを編集し、刷版を作製する工程をいいますが、それぞれの方式と特徴は次の通りです。

印刷方式と版の種類

凸版方式  用途・・・缶、シールなど

凸版印刷は、インキを版の凸部に付着させ、通常は直接、印刷用紙などに印刷します。
(一度ブランケットに転移させる、オフセット方式もあり、缶の印刷などに用いられています)
フレキシブルな樹脂を使うフレキソ印刷は樹脂凸版の一種で、飲料用紙容器や、段ボール、紙袋への印刷などに使われます。印刷物を拡大して見ると、画線部の輪郭部が濃くなるマージナルゾーンが見えるのが凸版印刷の特徴です。

凸版方式

平版方式  用途・・・カタログ、新聞、金属缶など

平版印刷は水と油の反発現象を利用した印刷方式です。
インキを付着させたくない非画線部に予め水(湿し水)を付着させる事で、インキを反発させる性質を持たせ、画線部は親油性の樹脂で形成されるため、インキが付着します。版から直に印刷せず、一度ゴムで出来たブランケットにインキを転写(OFF)し、そのインキが被印刷体に転写(SET)されることからオフセット印刷といいます。他の版式に比べ、印刷速度が早く、大部数の多色物に使用され、経済性があります。平版の代表的なものは、アルミを使ったPS版ですが、他に水なし平版などがあります。

平版方式

凹版方式  用途・・・出版、包装印刷、フレキシブルパッケージなど

版の凹部にインキを入れて印刷します。凹版印刷にはグラビア方式と彫刻凹版とがあります。
凹部の深浅によって、階調や濃淡などの調子がよく表現できるので、カラー写真の印刷に適しています。出版印刷や包装印刷に使用されるグラビア方式は主に有機溶剤系のインキで印刷され、彫刻凹版印刷は高粘度のインキで紙幣の印刷に使われます。グラビア印刷は、斜めの細線にジャギー(ギザギザ)が見られるので、オフセット印刷と区別ができます。

凹版方式

孔版方式  用途・・・プラスチック容器、ガラス容器など

孔版印刷には謄写印刷とスクリーン印刷があり、現在ではスクリーン印刷が圧倒的に多く、他の印刷法では困難な曲面印刷もでき、プラスチックやガラスなど幅広い素材に適用できます。交通標識から、ビニル製品、パネル文字からプリント基板の様な精密印刷、曲面印刷など幅広い工業用途で使用されています。版はその名の通り、孔が開いていて、その孔を通過したインキにより印刷されます。一般的にインキは不透明なので、下刷インキの色が出にくく、
CMYの重ねによる写真調の再現は不得意ですが、オフセット印刷等に比べて、非常に厚みのある印刷も可能です。

孔版方式

無版方式

電子写真とインキジェットの2つの方式がも最も普及しています。電子写真方式は、オフィスで利用されているレーザープリンタや複写機などに使われている技術でゼログラフィと呼ばれ、色材はトナー(乾式と湿式がある)を用いて帯電・露光・現像・転写・クリーニング・定着のプロセスにより印刷されます。インキジェット方式は、プリントヘッドの小さな孔から高速に液体インキを吐出させて印刷します。ヘッドと被印刷物が非接触なので、被印刷物を選ばない特徴がありますが、ヘッドとの距離はかなり近づけて印刷する必要があります。インキの吐出方式により、ドロップオンデマンド(DOD)方式とコンティニアス方式の二種類がありますが、家庭用のPCで印刷するプリンタは
DOD方式です。
無版印刷はデジタルデータだけあれば、版不要で印刷できるので非常に画期的な印刷方式です。
また、バリアブル印刷と言い、データを連続的に入れ替える事で、異なるデザイン等を連続的に印刷する事が可能であり、必要な量だけいつでも印刷出来るという意味でオンデマンド印刷ともよばれます。
容器の印刷でも一部実用化されており、今後の発展が期待される印刷方式です。

無版方式